訪れたのは2023年11月13日。最初にお断りいたしますが、大変申し訳ないことに、今回下流からのダムの写真はありません。
川内川(せんだいがわ)の川内川水系にある鶴田ダムは、昭和41年3月(1966)に竣工。九州でも屈指の多雨地域のため、洪水調節と発電の目的で作られました。事業主体は国土交通省で電気事業者は電源開発(JPOWER)。
しかし、昭和44年、46年、47年と大規模な出水が頻発したため、昭和48年電気事業者と話し合い、発電容量の一部を買い取り洪水調節容量を4,200万m3から7,500万m3に変更しました。
ところが、平成18年7月(2006)鹿児島県北部豪雨災害が発生。記録的な大雨により計画を超える異常洪水が発生したため「ただし書き操作(緊急放流)」を行いました。幸いにも開始後1時間ほどで流入量がピークを過ぎ低下傾向を示しました。
洪水調節容量のほぼ全量(99%)を使い切って洪水調節を行い、下流の河川に流れる水量を少なくして洪水被害の軽減に努めた。一方、洪水調節により河川水位を約 1.3m低下させるとともに、最高水位に達する時間を 4 時間遅らせることで避難・救助活動の時間を確保出来た。
平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害対応について(情報通信施設の活用状況)(PDF)より
また、7月22日15時55分ごろダム下流の道路を含む山腹法面で大規模な崩壊があり、鶴田ダム管理所の商用電力、一般電話回線、管理用光ファイバー、水道などのライフラインが寸断され、鶴田ダム管理所の孤立は5日間続きました。
鶴田ダムではライフライン寸断に対して以下のように対応しました。
- 商用ケーブルが切断され停電状態→自家発電に切り替え
- NTT電話回線・管理用光ファイバーケーブルの切断→マイクロ回線による専一公接続を活用
(管理所)マイクロ回線→他事務所NTT回線→電話・FAX - 水道管が破損し断水状態→飲料水は貯蔵品で対応、トイレ等の水は野外に雨水を貯留する対応
- 下流道路の冠水等により警報巡視活動が困難な状況→迂回路等を活用、最大限の警報巡視活動を実施
想定を超える異常洪水に精一杯対応しましたが、被害は免れませんでした。
鹿児島県の人的被害は死者5名負傷者11名、住家被害は全壊242棟半壊1,225 棟一部損壊74棟、床上浸水376棟床下浸水1,265棟、被害総額は約290億円にも達しました。
かだいおうち:2006年7月鹿児島県北部豪雨災害 より
これにより、鶴田ダム再開発事業が始まり洪水調節容量を最大7,500万㎥から1.3倍の9,800万㎥に増産し、洪水調整機能を強化する日本最大規模のダム再開発事業が始まりました。(鶴田ダム再開発事業とは)
再開発事業完了後の令和3年7月(2021)には既往最大の流入量4107㎥/sがあり、大きな防災効果を発揮したのでした。(鶴田ダムにおける柔軟な操作の検討について(PDF))
訪れた時は鶴田ダムの堤体壁面補修工事が行われていました。
鶴田ダムでは事前申し込みするとダム見学ができます。かなり迫力のある場所からも見ることができるようです。(鶴田ダム管理所ダム見学のご案内)
もうしばらくしたら通れるとのことだったので、一旦引き返して展望台から鶴田ダムを見てみましょう。
階段をのぼってみましょう
大丈夫!われらダム部は何度も展望台目指して登ったのは良いけど、草ぼうぼう木が繁々、ダムどこ~?という経験を幾つもしてきた。覚悟はできているさ。
そうきたかー
帰りは来た道ではないところを行きます。
川内川大鶴ゆうゆう館は鶴田ダムに関する展示とレストランがあります。ダムカレーもあるので、ダム部ならぜひ食して見ねばなるまいて…
堤体の両端が折れてる感じいいねいいね。
正直言ってカツ定食、この値段でこのクオリティは素晴らしい。揚げすぎておらず肉が柔らか、衣はサクサクとして、ダムカレーも美味しかったけど、次ここに来たらカツ定食にすると思う。
お腹もいっぱいになったし、工事も終わったっぽいので再度ダムを見に行きましょう。
左上に管理所があります。
50cm間隔で削孔→削孔個所にD22の鉄筋を差し筋→差し筋に鉄筋を設置→差し筋の上部に25cm間隔で配筋→型枠→コンクリ→完了という流れのようです。
管理所(GoogleMaps)は少し坂を上って行くのですが、今回は立ち寄っていません。この諸元は古いもののようです。
丸いのは放水管の実物大模型
しかしこの建物は使われてはいないようでした。
この設備の下では壁の補修やってるはずなので、それ関係の足場と道具なのだと思う。
ここで右岸側に折り返します。
浮体式仮締切工法 が新しく導入されました。これにより台座コンクリートが不要になることから、潜水作業を削減でき、安全性が向上しました。
日建連 土木賞
参考:
- 国土交通省九州地方整備局「鶴田ダムができるまで」
- 一般社団法人九州地方計画協会 平成18年7月の川内川豪雨における鶴田ダムの操作について
- 鹿児島県 平成18年7月鹿児島県北部豪雨
- 平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害対応について(情報通信施設の活用状況)(PDF)
- 鶴田ダム非常事態(ライフライン途絶等)下での計画超過洪水対応(H18)と、その後の「洪水調節」、「情報提供」方法の見直し、並びに実洪水操作への適用(H19)(PDF)
- 国土交通省九州地方整備局 鶴田ダム再開発事業とは
- 鶴田ダムにおける柔軟な操作の検討について(PDF)
- 鶴田ダム再開発事業の概要(PDF)
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